木造は古くてもろい?
テレビ東京ガイアの夜明け今回のテーマは【木造建築】。素人目に見ても昨今の建物はコンクリート等が主流であり、アパートを賃貸契約する際も、木造建築の物は築年数も長く、いかにも昭和の建造物を象徴するような存在だ。
火事に弱く、地震に弱い木造建築。この令和の時代に再び脚光を浴びようとしているのは物珍しさからではない。技術革新によってその弱点を克服しているという。
火事に強い木造の新技術とは?
まず木材の一つ目の天敵・火事を克服する為に生み出された技術が『液体ガラス』。通常の木材にこのガラス溶液を漬ける事で燃えない木が完成するのだ。この液体ガラスをまとった木は「燃えにくい」「腐りにくい」「通気性・匂い・手触りは素材のまま」という木の良さを損なわず、付加価値を与えるという。
実際この燃えない木と、通常の木で作ったミニチュアにガソリンを大量にかけて燃焼実験をした所、通常の木はあっという間に炭化したのに対し、燃えない木は表面が黒くなっただけでヤスリでススをこすると、その下からしっかりと燃えない木が木目までバッチリ残っていた。
その生みの親・建材メーカー『ニッコー』の社長・塩田正利さん。長年コンクリートを研究していたが、70歳を超えて木材の研究に転向するというバイタリティーに溢れた社長だ。日本の国土の3分の2が森林で、木造は日本人に一番合うという事を再認識して欲しいという。その為に現在も壁に塗るだけで燃えなくなる塗料を創意工夫している最中だという。
地震に強い木造の新技術とは?
次に木材の二つ目の天敵・地震を克服する技術が『CLT(直交集成板)』。岡山県の『銘健工業』にて作られた、通常建物に使うには心許無い痩せたスギや、値段のつかない間伐材を使用して、木の板を何層にも重ねて耐久性を強化する事でコンクリートの4分の1の重さながら「耐震性」「耐火性」「断熱性」の3つを飛躍的に向上させるという。
そしてこのCLTを用いた新建材にいち早く注目したのが住宅メーカー『ライフデザイン・カバヤ』。立ちはばかるコストという大きな壁に、地方の一企業が大手に対抗する為に攻めの姿勢とチャレンジ精神が大事だと試行錯誤を繰り返す。
大型“木造”建造物は増加中
今現在、『木造革命』とも言うべく様々な建築技術を導入された巨大な木造建造物は増加しているという。コーヒーのスターバックスも内装や家具を木材で建造された店舗の出店を拡大しており、国立競技場や高輪ゲートウェイ駅といった建造物も木造で作られており、現在、国も木造にシフト傾向にあるという。
環境・自然と共に歩む木造建築
木造からコンクリートへと移行した背景には耐久性などの他に、森林伐採など自然破壊の問題があった事は否めない。ただ、戦後に全国に埋められたスギやヒノキは野山の治水力を失い新たに土石流を生み出す要因になったものもある。しかし、今回の技術革新は木造をレガシー的な位置づけに留めず、コンクリートを上回る存在感を示した。現在、放置された野山の間伐材等を有効活用する道を示し、衰退した林業に息吹を与える事で環境保全と経済の再生に繋がりうる事はとても意味のある功績のように思う。
木の温かみ・心地良さは年を重ねるごとに深く染み渡る。21世紀は知識と技術を伴った『木造の逆襲時代』。とても楽しみである