大戸屋が再現する「日本の家庭の味」
テレビ東京ガイアの夜明けにて【“大戸屋”買収劇の真相~人気定食チェーンはなぜ狙われたのか?~】を鑑賞した。
大戸屋と言えば、日本全国にチェーン展開を手掛ける外食産業の再大手で、一度は利用した事がある方も多いのではないだろうか。
店内調理をモットーに、出来立ての食事で心にも満足感を与えてくれる企業だ。
大戸屋の急成長と衰退
1958年の創業以来、約60年に渡り外食チェーンをけん引し、豊富なメニューと万人受けする味わいで日本全国に多くのファンを確立してきた大戸屋。
しかしこの数年、大戸屋から聞こえるニュースは否定的なものばかりだった。
相次ぐ値上げや、提供量の減少、質の低下…
コロナ禍で決定的となってしまったが、大戸屋ホールディングスの赤字額は過去最大の15億円となっていた。
セントラルキッチンとは何か?
そんな折、現れたのが“株式会社コロワイド”。居酒屋・甘太郎や、牛角、かっぱ寿司など飲食業を中心に様々な業態を一挙に手掛ける企業だ。
そのコロワイドが2020年4月に大戸屋ホールディングスに対して提案したのが、経営陣を一新し、子会社化する計画。
大戸屋ホールディングスは子会社化するにあたり店内手作りではなくセントラルキッチン(=工場で加工したものを店舗に送るスタイル)を提案されるが、
これを拒否。大戸屋は豆腐も店内で作り、カツオ節も店内で削る程、店内調理に誇りを持っている。
そのこだわりを支持する多くの株主のお陰で、6月の株主総会では、子会社化を反対とする大戸屋側の支持者が多く買収は否決される。
株式会社コロワイドの敵対的買収
すると7月にすぐさまコロワイドはTOB(株主公開買付)を発表。一株3081円で株主から買い付けを行う。この額はここ10年ほど大戸屋株を購入した人はもれなく儲けが出るほどの金額であった。
そして9月ー TOBが成立し大戸屋の取締役がコロワイド側に一新される事となる。
大戸屋の最大の売りであった店内調理が無くなってしまうのは寂しい気もするが、料理の提供時間の遅さや、人件費がかさんだり質の低下につながるネックとなっていたのも事実。
コロワイドが主張するのは「工場で作ろうが店舗で作ろうが安全で安心でおいしいなら変わらない。早く出せなければサービス業ではない」との事。
現に私も、街中で大戸屋の看板はよく見かけてはいたが、食指が動かなかったのも事実。あんなにも味は美味しいのにだ。
実体験として、リピートを促すサービス満足度が高くはなかったのかと失礼ながら納得してしまった。
大戸屋を日本一の定食屋に
コロワイドが大戸屋を潰したのではなく、傾いた経営の可能性を買い取った買収であったと信じたい。
なぜならばコロサイド側の新取締役の一人にかつて大戸屋の従業員としての勤務経験をもつ、三森智仁氏がいる。何を隠そうこの方は大戸屋の創業者・三森久実氏の長男なのである。
三森智仁氏は、2015年大戸屋創業者・三森久実氏の死去の際、経営陣とめ退社。久実氏から相続した20%の株式を保有していたが、2019年全株をコロワイドに売却し筆頭株主となった事が、今回の買収劇の発端とも言える。
三森智仁氏は退社後も父の愛した大戸屋で食事をし、今も全メニューを食べているという。日本一の定食屋にするという父の夢を託し、コロワイドの資金力と決意に懸けたのだ。
買収やセントラルキッチンの手法でV字回復した企業は多数ある。かつての大戸屋のファンとして今後の経営再建に大いに期待している。